製法
装飾
陶磁器は、焼成の前後に装飾ができます。
素地が半乾燥して革のような固さのときには、貼付(はりつけ)やスタンプ、彫刻や線刻、透かし彫りなどの技法で文様がつけられます。
器壁は、削ったり研磨することで滑らかに、かつ薄くなります。
研磨は焼成後にも行われます。
また、スリップ(泥漿:でいしょう)という、あらい粒子を漉(こ)して取り除いたクリーム状の土を用いることもあります。スリップには色がつけられることもあります。
スリップは完全に乾燥して固くなった陶磁器にかけたり、刷毛(はけ)で塗ったり、注口付きの容器やスポイトのような道具で流しがけされます。
先端のとがった道具でスリップをかきおとし、素地をみせて文様を表す技法は、スグラッフィート(掻落し:かきおとし)として知られています。
陶磁器にほどこす絵付(えつけ)には、青花(染付)磁器のような透明釉の下に描く釉下彩と、色絵磁器のような釉の上に描く上絵付の2種類があり、両者を併用する場合もあります。
釉下彩では、釉下に描くコバルト、銅、マンガンなどの金属酸化物の色を釉や素地に定着させるために、多少高い温度で焼成する必要があります。
いったん焼成したあとの釉の上に精製されたエナメル顔料を用いる上絵付では、エナメルと釉を融和させるために上絵窯で低温で焼きつけなくてはなりません。
商業的に量産される陶磁器の絵付には、しばしば銅版転写などの印刷の手法が用いられます。銅版転写は、紙に印刷された文様に酸化物をつけ、湿っているうちに陶磁器にうつしとる方法です。18世紀の印版は手作業による銅版でしたが、現在ではリトグラフや写真版が用いられています。
中国では15世紀以来、ヨーロッパでは18世紀から、製品の識別のためにさまざまな窯印やマークが用いられてきました。また、古代ギリシャの陶工や陶画工、イスラム世界の陶工、それに20世紀の陶芸家たちの多くは、自らの作品に個人的に署名を残しています。
これらは、陶磁器のつくられた時代や生産地などを鑑定する際の重要な手掛かりとなります。しかし、著名で高価な陶磁器の場合は、しばしば窯印やマークが模倣、偽造されるため、慎重な調査研究が必要です。